●実技5・沢登り2●

【日程】2005年8月20〜21日(土日)
【場所】山梨県・奥秩父・東沢〜釜ノ沢

【講師】
樺島(こだま山の会)
鶴田(川崎労山)
鳥越(小田原ナーゲル)
【委員】
末吉(ACY横浜)

 深く長い渓谷の中には1日では遡行不可能な長いものがあります。その時は沢、谷の中で1泊、時には2泊以上をしなければなりません。長い沢を歩くコツには軽量化が必要。そのコツとは?安全なビバークポイントを探しあてるコツとは?そして焚き火を楽しむコツとは?
 今回は、笛吹川の源流部、奥秩父の甲武信岳に突き上げる銘渓、東沢〜釜ノ沢での1泊沢登り講習の様子をお届けします。

●●● 生徒さん、A.Y.の感想文 ●●●

 L学校で3度目の沢実技で今回は初の泊まりの沢となる。縦走と違い荷物を背負ってバランス良く登攀できるか、長い遡行をみんなに遅れずに着いて行けるだろうかなど、普段よりもより強いプレッシャーを感じ現地を目指す。

 19日金曜日の夜発で西沢渓谷駐車場に到着し仮眠。土曜の朝4時30に起床し6時に出発。一時間ほどして河原で装備を装着する。ゴツゴツした河原や川沿いの山道を歩くこと4時間(ここまで
が長かった!)。

 最初の取り付き“魚留の滝”を左から巻く。今まで懸垂下降でも両手でザイルにしがみつきやっと下りてきたが、この時はじめて岩と垂直になりザイルに体重を預ける感触をつかむ。“魚留の滝”をパスした後にソファの形をした岩があり座ってみる(なかなかの座り心地だ)。

 今回の沢では前回・前々回の丹沢の沢と違い滝を直登せず巻く形で殆ど進んだ。”ナメ沢“というナメ状になった沢が左右に繰り返される。それらはまるで巨大な滑り台で、登った者がとても小さく見えるほど大きい。沢登りは水遊びも兼ねているらしくザックごと川に飛び込むもの。岩の斜面を利用して滑り台を楽しむものとみんな子供みたいに楽しそうだ。気持ち良さそうだが速乾性を着用していても濡れた服は重くなりそうだし、何しろ“かなづち”なもので、私は眺めているだけにした。

 今回一番感動した場所は“千畳のナメ”だ。アーチ状になった木々に囲まれた緩やかなナメの続くこの場所で記念撮影をする。誰もがこんなに優しい水に出会ったら顔が綻ばずにいられないだろうと思った。今回はザイルに掛かったカラビナをプルージックで通過する箇所が数本あった。足場の悪い登りもザイルがあるだけで静かに安心して登れるから不思議だ。登ることに夢中になるとプルージックをついつい上げ忘れてしまう。登りは何とかなるがその後の下りは足場が見えずなかなか難しい。下りもへつりも離れて見れば簡単そうに見えるのだが随分手こずった。

 一日目は最後に“ヤゲンの滝”を左から巻き寝床の広河原に15時に着く。初めてのツエルト泊と焚き火を予定していたが小雨がぱらつき心配になる。このまま濡れた服のまま寝ることにならないようにと空に願う。薪を探して森の中に入るが湿った小枝しか見つからずにいると“宝の山”を見つけたらしくみんなで向かう。斜面には倒木が山のように転がっていてのこぎりでそれらを分ける。牛乳の紙パックが装備一覧に載っていたが内側のロウが燃えやすいらしい。各班ごとに食事をすませ折り重なった木々達に火が灯るのをみんなで見守る。湿った木々が乾燥し燃え出しやがて“完璧な焚き火”が生まれた。濡れた衣服や体が温まってとても有難い。今回の沢では軽量化を重視していたがお酒は別物らしい(笑)。明日の遡行に備えなごり惜しいが早めに床に着いた。

 朝方は雨の音が続きツエルト内に水滴がたまりそれらが体を冷やした。4時30に起床し外に出てみたら雨は降っていない。どうやら雨の音は最初だけで(月も出ていたらしい)川の音が雨音に感じたらしい。6時には出発し甲武信小屋を目指す(甲武信とは甲斐・武蔵・信濃の境界)。前日よりも深い森の中の沢を歩き続ける。途中に巨大な倒木の群れに何度も遭遇し圧倒される。分岐点が何度もあったが地形図を読み取ることが全く出来ず、勉強不足とハイキング気分や人に着いていく感覚が抜けていない事を強く反省。

 3度目の沢でだいぶ歩けるようになったつもりでいたが、頭がぶれ、バランスが悪い&荷物のパッキングやザックの背負い方の指摘を受ける。たしかにクライミングや沢では、転ぶ、滑る、落ちるのではと心配を過剰にしていてそれらが強く歩きに影響している。崖沿いの山道を歩いているだけで足の運びが不安定になるのは、自分は“落下恐怖症”ではなく“高所恐怖症”なのかもしれないと思った。またクライミングの足ではつま先に加重をするが、沢では足の裏全体を付け背筋を正すことによって滑らず立ち込めると教わった。何度か試してみたが滑るのでは無いかとへっぴり腰になってしまう。

 最後の詰めは斜度のきついガレ場では無くナメ滝が連続する。甲武信小屋を抜け稜線に出るとお花畑が出迎えてくれた。ふかふかの登山道は足に優しくて心地良く感じたのもつかの間、冷やしてしまった左膝が痛み出し足に力が全く入らなり連続して何度も転んだ。痛み出した足は変わらないだろうとそのまま歩き続けたがギブアップ。ザックの荷物を出しみんなで分担して持ってもらうにことにな
った。団体行動では無理をして迷惑を掛ける前の処置が必要だなと思った。

 前回の山行で行動食不足になり今回は必要以上に持参してしまった。制限重量を守ってはいたが担げるでは無く、担ぎ続ける事が出来るかが大切だ。出発前に友達からメールをもらった。「仲間と先生を信じて、自分を信じてゆけい!きっと大丈夫だから!しっかりな!」

 荷物を持ってもらったり声を掛けてもらったお陰で最後まで歩くことができた。15時には全員で無事に下山できほっとする。それぞれが不安と期待と得るものが大きい山行になったのではないかと思う。


◆写真1◆
西沢渓谷と東沢渓谷の二俣の吊り橋を渡る



◆写真2◆
谷底の爽やかな空気に降り注ぐ朝日



◆写真3◆
「法螺貝のゴルジュ」の奇岩と美しい水の色



◆写真4◆
旧登山道から河床に降りる
ホールドをしっかり持って!


◆写真5◆
エメラルドグリーンの色に染まる東沢渓谷の美しい淵


◆写真6◆
巨大な岩盤に圧倒される。大地の力だ。


◆写真7◆
滑りやすいナメではバランスが肝心
怖がって腰が引けるとかえって滑りやすい。
常に「身体を立てる」ことを忘れずに。


◆写真8◆
青空に恵まれた初日は、ゴーロ歩きも快適だ



◆写真9◆
「魚留の滝」の左側の壁に取り付いて
ダイナミックなムーヴでパスする生徒

◆写真10◆
初日のクライマックス「千畳のナメ滝」で
歓喜のあまり駆け出す生徒(笑)


◆写真11◆
「両門の滝」の釜で泳ぎに興じる生徒達
夏の大きな沢を遡行するときの醍醐味だ

◆写真12◆
両門の滝をパスするためにフィックス・ロープを張った
プルージックの結び目は丁寧に作る


◆写真13◆
両門の滝の右側の岩壁をへつりながら巻く

◆写真14◆
このポイントは本ルートで最も事故の多い場所
講師や他の生徒から緊張感のある指示が飛ぶ


◆写真15◆
危険地帯を突破し、安全な場所でビバークの準備
カラフルなツェルトが谷間を埋める

◆写真16◆
いよいよ焚き火の準備。
これが楽しみで来るようなものだ(笑)


◆写真17◆
夕立で湿ってはいたがなんとか火がついた
暖かい火で身体を乾かし酒を飲む。癒しのひととき

◆写真18◆
夜が明けて2日目
源頭部を目指してさらに登り続ける


◆写真19◆
ナメ滝の急峻な部分は難しい
パスして樹林帯の巻き道を進む

◆写真20◆
2日目のクライマックスは
源頭部に連なる数百mのナメだ


◆写真21◆
無事に遡行を完了して甲武信小屋にゴール!


◆写真22◆
美しいヤナギランのお花畑が出迎えてくれた